UPを開発/販売しているJawboneは、まず初めにBluetoothヘッドセット「Jawbone」シリーズから始まった会社です。
ミリタリースペックのノイズキャンセリングを実装したこのヘッドセットシリーズのヒットを経て、次にBluetoothスピーカー「JAMBOX」シリーズを世に送り出しています。
そんなBluetoothワイヤレスを活用した製品を出し続けてきた同社が、UPではその無線技術を使っていません。
Bluetoothに関する技術やノウハウは豊富に持っているであろうJawbone社、そして当然Bluetooth接続を期待しているユーザーも多い中、なぜUPではそのBluetoothを敢えて採用していないのか。
先日、Jawboneの国内代理店であるトリニティの社長、星川さんにお会いしたので、話を伺ってきました。
Bluetoothを搭載しないまず一番の理由は、バッテリーの持ちということでした。
無線を搭載すれば、常に電波を発しているわけで、当然それだけバッテリーの持ちが悪くなります。
もちろん、バッテリーの容量を増やせばバッテリー寿命は長くできます。
しかし、そうすると当然重量が増加し、着けていても気にならない重量(UPは約20グラム)を実現できなくなります。
UPは、同期と充電のとき以外は24時間「基本的に着けっぱなし」が推奨されています。そして、「着けっぱなし」であるために、材質やデザインはもちろん、機能面においても考え抜いて製品が開発されていることがわかります。
「基本的に着けっぱなし」であるゆえに、充電回数は少ないほうがいい。
「基本的に着けっぱなし」であるゆえに、重量はなるべく軽くしたい。
カタログに載って目を引くスペックよりも、毎日使うユーザーの快適性を優先した結果、現在のところ無線を搭載しないという選択をしたと言うことができると思います。
もちろん、将来バッテリー技術や無線技術が進歩すれば、現在の重量を保ったままBluetoothが搭載できるときも来るでしょう。そのときには、UPもBluetoothを搭載することがあるかもしれません。
続いて、物理的に接続されている安心感という点です。
無線であるBluetoothは、接続にはやはりある程度の準備(ペアリング)が必要で、しかも目に見えないため一度トラブルに当たると解決がむずかしいということです。
実際、Bluetoothのヘッドセットやスピーカーのサポートで一番多い問題は、無線接続のものということでした。
UPは健康のための製品で、これを使って欲しい人は、それはもう老若男女さまざまな人たちです。
ガジェット好きのこういった仕組みに詳しい人たちのためだけの製品であれば、Bluetoothを搭載することもあり得たかもしれませんが、いわゆる「rest of us(詳しい人以外)」のための製品では、よりわかりやすく物理的に接続することでの安心感に代えられるものはないということのようです。
ここでもやはりユーザーの快適性を優先した製品開発が行われていることが見てとれます。
もちろん個人的には、BluetoothやNFCなどで物理的に繋ぐことなく同期できたり、GPSを搭載して移動情報を確認できたりするのも楽しいだろうとは思っていますが、それはまだこれから先の話。
できることとやるべきことを区別し、思い切って省略するのは、新しいものや技術を単に詰め込むことよりもずっと難しいことなのです。
製品の根本的なコンセプトと現在ある技術、そして多くのユーザーの快適性の中でベストバランスを追究したのがこのUPと言うことができます。